皮膚の疾患

皮膚の疾患

皮膚の疾患

新生児期からのスキンケアは、アレルギー疾患の予防に非常に重要です。

アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など、様々なアレルギー疾患と皮膚との関連性に着目し、お子様一人ひとりに合ったスキンケアをご提案いたします。

全身疾患に伴う皮膚症状や、とびひ、水いぼなどの感染症、外傷など、幅広い皮膚疾患に対応しています。
代表的な疾患としては、あせもや乳児湿疹、おむつかぶれ、アトピー性皮膚炎などがあります。そのほかにも小児皮膚科にはさまざまな疾患がありますので、以下の内容をご参照ください。

あせも(汗疹)

汗疹(あせも)は、汗をたくさんかいた後に皮膚に小さな水ぶくれやブツブツができる皮膚トラブル。
夏場に多く、小児に発症しやすいのが特徴です。
基本的には無症状で自然に治りますが、湿疹が加わると痒みを伴う「あせも」となります。

スキンケアをしっかり行い、痒みがある場合はステロイドの外用薬を使用します。掻き壊して悪化している場合には、抗ヒスタミン剤の内服を併用することもあります。

あせもができやすい場所

額、首回り、脇の下、手足のくびれなど、汗をかきやすい部位は特に注意が必要です。また、背中や後頭部は蒸れやすいので、これらの場所も気をつけましょう。ベビーカーやチャイルドシートに座っていると、背中に汗をかいてしまうことがあるため、こまめに確認してあげてください。

あせもの予防法

汗疹を防ぐ薬はありませんが、ホームケアが最も効果的です。室内は風通しを良くし、温度は24度、湿度は60%程度の涼しい環境を保つことで、汗疹は1日程度で改善することが多いです。

服は吸湿性の良い木綿素材がおすすめです。シャワーは何度浴びても構いませんが、石けんの使用は1日1回までにし、泡立てて優しく洗い、汗や汚れを丁寧に落とすようにしましょう。

薬による治療

かゆみが強い場合には、かゆみ止めのクリームや弱いステロイドを処方してかゆみを抑えることがあります。また、日焼けや皮膚が乾燥しやすい方には、皮脂を保護するためのローションが処方されることもあります。汗疹を頻繁に掻くと、細菌感染を引き起こして「とびひ」になることがあり、その際や膿がたまった場合には、抗生剤の軟膏が処方されることもあります。最近では、夏だけでなく冬の暖房による温めすぎでも汗疹ができるケースが増えています。

乳児湿疹

「乳児湿疹」という名称は健康保険の適用病名として使われますが、実際には特定の病名ではなく、乳児に見られる肌トラブル全般を指す言葉です。
代表的な症状には、「新生児ざ瘡」、「乳児脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)」、「皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹」、「おむつかぶれ」などの接触性皮膚炎が含まれます。

乳児は生後6ヶ月頃まで皮脂の分泌が活発ですが、その後急激に減少し、これにより皮膚トラブルに発展しやすくなるため注意が必要です。

頭のかさぶた

余分な皮脂が髪にこびりつき、黄色いかさぶたのようになることがありますが、これは病気ではありません。
かさぶたが少量であれば、毎日お風呂でシャンプーをすることで改善します。

かさぶたが多い場合は、オリーブオイルを塗って柔らかくしてからお風呂で洗い流すと、きれいに取れます。

もし、かさぶたが厚く、その下に炎症やただれが見られる場合は、塗り薬を処方しますので、医師の指示通りに使用してください。

赤ちゃんのニキビ

生後1〜2ヶ月の赤ちゃんの顔に、思春期のようなニキビができることがありますが、これは病気ではありません。
泡立てた石鹸で優しく洗い、清潔に保っていれば、時間とともに自然に治ります。

新生児ざ瘡

赤ちゃんにできるニキビのこと。
生後約2週間頃から皮脂腺の分泌が活発になることでニキビが現れ、数ヶ月以内に自然に治まることがほとんどです。
常在菌による炎症も関与しているとされていますが、特別な治療は必要ありません。

入浴時に泡立てた石鹸で優しく洗い、しっかりすすぐといった正しいスキンケアを1日1回行うことで、約半月程度で改善することがほとんどです。

乳児脂漏性皮膚炎(乳児脂漏性湿疹)

乳児脂漏性皮膚炎は、新生児にマラセチア(でんぷう菌)という皮膚の常在菌が初めて付着することによって起こる反応だと言われています。
おでこや頭部、耳の周り、股部、わきの下など、皮脂腺が多い部分に発生しやすく、生後3ヶ月頃には多くの場合、自然に治癒します。

ただし、炎症が強い場合は、短期間のステロイド外用薬を使用することがあります。また、症状が長引く場合には、アトピー性皮膚炎の可能性も考慮されます。

皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹

「皮脂欠乏症」とは、皮脂分泌が不足して皮膚が乾燥し、皮膚がカサカサ・ガサガサし、白っぽく粉を吹いた状態のこと。
これに湿疹が加わると「皮脂欠乏性湿疹」と呼ばれます。
生後6ヶ月を過ぎると、赤ちゃんの皮脂分泌が急激に減少し、乾燥しやすくなります。

部屋の湿度を適切に保ち、ヘパリン類似物質などの保湿剤を使ったスキンケアで、皮膚の保湿をしっかり行いましょう。
もし、かゆみを伴う、または湿疹が2ヶ月以上治らない場合は、アレルギーなど他の原因が考えられるため、早めに医師にご相談を。

おむつかぶれ

おむつかぶれ

尿や便に含まれるアンモニアや酵素が皮膚を刺激することで、おむつが当たる部分に赤いブツブツやただれが生じることがあります。
これがおむつかぶれで、痒みや痛みを伴い、悪化すると血がにじむこともあります。

おむつかぶれの際は、洗面器にぬるま湯を張っておしりをしっかり洗い、軟膏を塗ってケアします。

症状が重い場合は、弱めのステロイド外用薬を使うこともあります。
また、おむつで覆われる部分にはカビが原因のカンジダ皮膚炎が発生しやすいので、適切な診断が重要です。

おむつかぶれの原因

おむつかぶれは、赤ちゃんの尿や便、おむつとの摩擦や蒸れによって起こる「接触皮膚炎」です。
尿に含まれるアンモニアで肌が刺激され、下痢やおむつ交換の遅れ、入浴をしなかったことも原因となります。
また、過度におしりを拭きすぎることも誘因になります。

対策として、石けんをよく泡立てて手でやさしく洗い、ぬるま湯で優しく洗い流します。
タオルやスポンジは使わず、拭く際はタオルを押し当てるようにして皮膚をこすらないようにしましょう。

おむつかぶれの症状

おむつを装着する部位、特に肛門や外陰部、下腹部、太ももの付け根などに赤みが現れます。お尻全体が赤くなったり、ブツブツ(丘疹)ができたり、カサカサすることもあります。
症状がひどい場合は、皮膚がただれ、血がにじむこともあり、かゆみや痛みを伴うことがあります。

カンジダ症などとの区別

おむつかぶれが数日以上続くと、カビの一種であるカンジダが肌に感染することがあります。
カンジダ症は、皮膚のしわの間などおむつが直接当たらない部分に症状が出やすいですが、おむつかぶれと見た目が似ているため、判断が難しいです。

自己判断でステロイドを使用すると症状が悪化するため、ワセリンで改善しない場合は皮膚科専門医を受診しましょう。
抗真菌剤が治療に使われ、専門医は顕微鏡検査で高い確率で診断できます。
また、とびひや乾癬など他の病気との区別も重要です。

カンジダ皮膚炎

一見、おむつかぶれと似ていますが、カンジダ皮膚炎は真菌(カビ)の一種による炎症で、皮膚に赤みやびらんが現れるのが特徴です。

尿や便が接触しない部分にも炎症が見られる場合、カンジダ皮膚炎の可能性が高くなります。
一般的な炎症治療では改善が期待できないため、抗真菌薬の軟膏を使用して治療します。

とびひ(伝染性膿痂疹)

掻きむしった手を介して、水ぶくれが瞬く間に全身に広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、この名前が付けられました。
湿疹や虫刺されなどの小さな傷に細菌が感染することで発症し、掻いた手を通じて全身に広がります。
水ぶくれや膿が現れ、びらんやかさぶたができることもあります。

悪化すると入院が必要になる場合もあり、多剤耐性黄色ブドウ球菌が原因となることもあるため、注意が必要です。症状で判断することが可能ですが、必要に応じて血液検査や培養検査を実施します。

爪をしっかり切り、正しいスキンケアを行った上で抗生剤の軟膏を塗布し、症状が重い場合には抗生物質の内服が行われます。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりする状態です。
1歳未満では2ヶ月以上、1歳以上の場合は半年以上続くと慢性と判断されます。
アレルギーを引き起こしやすい体質や皮膚のバリア機能が低下していると、発症しやすくなります。

アトピー性皮膚炎の湿疹には
以下のような特徴があります。

  • かゆみをともなう
  • ジュクジュクしている
  • 皮がむけている
  • 顔や身体に左右対称に湿疹が起こりやすい
  • 皮膚に赤みがある
  • 掻いたところから体液が出てくる
  • 症状が長期化すると皮膚が硬くなり、分厚くなる
  • おでこ、目、口、耳の周囲、わきの下、手足関節の内側にできやすい

アトピー性皮膚炎の原因と悪化の要因

アレルギーの発症には体質が大きく影響しており、過去に食物アレルギーを経験したことがある場合、再発しやすいと考えられます。また、血縁者にアトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを持つ人がいる場合、発症リスクが高まります。また、皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激が皮膚内部に侵入することで免疫が過剰に反応することによって発症すると考えられています。湿疹を悪化させる原因には、物理的な刺激、ダニやハウスダスト、カビ、化学物質、紫外線、汗などが含まれます。また、過度な疲労や睡眠不足、身体的・心理的ストレスも免疫を不安定にし、症状の悪化を引き起こす要因となります。

アトピー性皮膚炎の治療法

日常生活で注意すべき点

毎日しっかりお風呂に入り、石鹸やボディーソープはしっかり泡立ててから使用します。
汚れは擦り落とすのではなく、泡と馴染ませて洗い流すことが大切です。体を洗うタオルは、刺激が少なく肌触りの良い木綿素材を選びましょう。

洗った後は軽く湯船に浸かり、流し残しの泡がないか確認します。
長湯は痒みを引き起こすため避け、入浴剤もあまり推奨されません。

外遊びが多い子どもは汗やホコリで皮膚が汚れ、痒みや皮膚感染症の原因になるため、汗をかいた後はシャワーで流し、新しい下着に取り替えます。
急な痒みにはシャワーや冷たいタオル、保冷剤が有効です。

また、冷やした保湿剤を塗布することも効果的です。
根本的な解決策としては、ステロイド軟膏による皮膚炎の鎮静化が重要です。

保湿剤によるスキンケア

アトピー性皮膚炎では、皮膚が乾燥し、バリア機能が低下しているため、外部からの刺激に敏感になります。そのため、ステロイド外用薬や非ステロイド抗炎症外用剤(モイゼルト、コレクチム、プロトピック)に加えて、保湿剤の併用が必要です。石鹸で皮膚を清潔に洗った後は、失われた皮脂を補い、乾燥を防ぎます。入浴後はできるだけ早く(入浴後5分以内を目標に)、まだ肌がしっとりしている間に保湿剤を塗布することが重要です。夏はプールやシャワーの後、冬は空気が乾燥するため、適宜保湿剤を使用して乾燥を防ぎましょう。

薬物療法

アトピー性皮膚炎の薬物療法は主に外用薬に依存しており、皮膚の炎症を抑え、痒みを軽減するためにステロイド外用薬と非ステロイド抗炎症外用薬(モイゼルト、コレクチム、プロトピック)が使用されます。ステロイドは副腎皮質で生成されるホルモンで、湿疹や痒みを改善するための標準的治療法です。適切に使用すれば重篤な副作用はほとんどありません。

一方、非ステロイド抗炎症外用薬は生後3か月から使用可能で、長期間の使用でも皮膚の菲薄化が起こりませんが、炎症抑制効果はステロイドの方が強いです。そのため、急性期にはステロイドを使用し、症状が改善したら非ステロイド薬に切り替えることが重要です。

外用薬は医師の指示に従って継続的に使用し、勝手に減量や中止をすると治療効果が得られず、治療期間が延びる可能性があります。
十分に症状が改善した場合でも、外用薬の減量は段階的に行い、急に中止することは避けましょう。

蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹になると、赤く盛り上がった湿疹が見られ、非常に強い痒みを感じます。
掻くと症状が広がることがありますが、多くの場合、数十分から数時間で自然に改善します。

原因が明確でない特発性蕁麻疹(急性蕁麻疹や1ヶ月以上続く慢性蕁麻疹)、特定の刺激によって誘発される刺激誘発型蕁麻疹、血管性浮腫、さらには蕁麻疹関連疾患などに分類されます。

湿疹が皮膚の一部だけに現れている場合は、まず冷やしてみましょう。
それでも改善しない場合は受診してください。

また、かゆみが非常に強い場合や全身に広がっている場合は、抗ヒスタミン剤の内服治療が行われます。
患者によっては症状が長引くこともあり、痒みは非常に不快なものです。
内服治療により症状を抑えることができるため、お早めに受診してください。

水いぼ(伝染性軟属腫)

水いぼは、伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症で、小さなドーム状の丘疹で透明感があるのが特徴です。
これらは多発することがあり、敏感肌やアトピー性皮膚炎を持つ患者は皮膚のバリア機能が低下しているため、感染が広がりやすいです。
一般的には小学生から中学生の間に自然に消失します。

最近の小児科医は、この自然治癒を待つことを推奨しています。しかし、アトピー性皮膚炎などの影響で広がる場合があるため、早期に対処することも選択肢となります。

治療法としては、専用のピンセットで一つずつ摘み取り、中の内容物を排出します。この際、摘み取る際の痛みを和らげるために麻酔テープ(リドカインテープ)を使用することがあります。

虫刺され・虫による皮膚炎

蚊や蜂、ムカデなどの虫刺されによって引き起こされる症状や必要な処置が異なります。
蚊による皮膚炎では腫れ、赤み、水疱などが見られます。

一方、蜂やムカデに刺された場合は、一時的な強い痛みや赤い腫れが生じることがありますが、直後に重篤なアレルギー反応を引き起こすこともあるため注意が必要です。

もし嘔吐や呼吸困難の症状が現れた場合は、すぐにアドレナリンを投与し、速やかに医療機関を受診してください。
蜂やムカデによる痛みには、冷やすことが効果的です。蚊に刺されて強いかゆみを感じる場合には、ステロイド外用薬を使った治療が推奨されます。

また、炎症が強い場合には抗ヒスタミン薬やステロイドの内服が必要です。

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